岩国藩６万石（当初3万石）は毛利元就の孫にあたる吉川広家（1561-1625）を藩粗とします。

広家の父である吉川元春（1530-1586）は毛利元就の次男ですが、鎌倉時代より安芸の地頭であった吉川家に養子に入り、小早川家を継いだ弟（元就の三男）の小早川隆景とともに毛利の両川と呼ばれ、元就の長子である隆元、さらに隆元亡き後はその子の輝元を支えてきました。

元春は剛勇の人物で、毛利家が秀吉政権下に組み入れられることを潔しとせず、子の元長に家督を譲り隠居しました。しかし、後に秀吉の九州攻めの際には輝元の依頼により参陣し、その地で没しています。広家は元春の三男ですが、兄元長の死後1587年に吉川家を相続し、伯耆、出雲、隠岐、石見、安芸に所領14万国を領し、かって尼子氏の本拠であった月山富田城にを居城としました。文禄・慶長の役の際には渡海して戦っています。

関ヶ原合戦（1600）の際、広家は東軍徳川方が有利とみて東軍への参戦を唱えますが、毛利本家の外交を担当していた安国寺恵瓊は西軍への参加を主張。結局、毛利輝元は西軍の総大将としてかつげあげられてしまいまい、大坂城に入城します。一方、広家は関ヶ原に出陣しますが、西軍に勝ち目無しと信じる広家は、家康の家臣である本多正信を通じて、戦闘不参加を条件に毛利家120万石の安堵を申し出ます。実際、関ヶ原合戦には広家は戦闘に参加せず、東軍勝利の一因となりました。

しかし、広家は直接家康と交渉していた訳ではなかったため、毛利本領安堵の約束は反故とされます。毛利家は取りつぶし、毛利家領地の内、周防および長門36万石を広家に与えるとの沙汰が下されます。広家にとっては14万石から倍増となりますが、広家の戦闘不参加はあくまで毛利家安泰を願ってのものであったため、この申し出を辞退し、周防・長門両国を毛利本家の領土とすることを願い出て認められます。広家はこの中から岩国3万国を領することとなりました。

関ヶ原合戦時のこの広家の振る舞いは、毛利家にとって微妙なものでした。広家がいたからこそ西軍敗北にもかかわらず、毛利家が存続できたとも見ることができますし、逆に広家が戦闘に加わっていたら関ヶ原で西軍が勝利した可能性も否定はできないからです。このためか、吉川家は本藩である毛利家（萩藩）から冷遇され、3万石（後6万石）の領地を有しながら、独立した藩とは認められず萩藩の支藩扱いでした。広家以来13代の藩主を数えますが、吉川家が大名家と認められるのは、なんと関ヶ原合戦から268年後の明治元年になってからのことでした。