錦帯橋の詩
五竹も錦帯橋の詩を作っています。官を辞した後に作ったもので、城勤めの間毎日渡った錦帯橋も、官を辞した後はまた違った光景に映ったのでしょう。
| 防州錦橋天下無 山秀水清似畫圖 山花如錦今巳絶 錦水依舊以錦呼 錦橋不改當年色 蜿々五龍相追趨 記嘗誤落風塵裡 凌晨度雪入城郭 橋上雪深足屡躓 且苦寒威凛裂膚 又記斜風細雨夕 天風捲傘衣裳濡 風景雖好不消受 二十餘年負名區 今日微官一從擲 山光水色頓覺殊 昨日度雪顛躓處 今日驢背撚吟鬚 昔日風雨濡衣處 今日風雨被夫須 風雪今日却為趣 不教人苦教人娯 况復清明好風景 柳罩水樓煙模糊 又是涼秋好時節 一道金波月跳珠 此時朗吟橋上過 恍訝乘龍遊太虚 始覺仙凡不迥隔 悟則天道迷三途 陶潜歸去悔不早 何須題柱學相如 錦橋即是昇仙路 為走名利為凡夫 寄語橋上奔走客 蓋讀錦帯橋歌乎 為歌々之豈無意 吾元錦水一釣徒 |
防州の錦橋天下に無し 山秀でて水清く畫圖(がと)に似たる 山花錦の如く今巳(すで)に絶つ 錦水舊(きゅう)に依て以て錦と呼ぶ 錦橋 改らず當年の色 蜿々（えんえん）として五龍相い追って趨(おもむ)く 記するは嘗(かっ)て誤て風塵の裡(うち)に落ち 晨(あした)に凌ぎ雪を度り城郭に入る 橋上雪深く足屡(しばしば)躓(つまず)く 且つ寒威に苦しみ凛として膚を裂く 又記す斜風細雨の夕 天風傘を捲き衣裳濡れる 風景好しと雖も受るを消す 二十餘年の名區に負う 今日微官一たび從って擲(なげう)つ 山光水色頓(とみ)に殊なるを覺ゆ 昨日雪を度りて顛躓(てんし)せし處 今日驢の背に吟ゅ鬚を撚る 昔日風雨に衣を濡らせろ處 今日風雨に夫れを須(もち)いられる 風雪今日却て趣を為す 人の苦を教えず人の娯を教え 况(いわ)んや復た清明好う風景 柳は水樓に罩(こ)め煙りて模糊たり 又た是れ涼秋を好き時節なり 一道の金波 月珠に跳ねる 此の時 朗吟して橋上を過る 恍として訝かる龍に乘じて太虚に遊ぶと 始めて覺ゆ仙は凡て迥(はるか)を隔だてず 則ち天道を悟り三途に迷う 陶潜 歸去 早から去りきを悔い 何んぞ須らく柱に題して相學び如く 錦橋 即ち是れ昇仙の路 名利に走るを為して凡夫の為すとす 橋上に語を寄す奔走の客 蓋讀して錦帯橋 歌か乎な 歌を為す之の歌 豈に意無からんや 吾れ元 錦水の一釣の徒 |